製薬会社の研究員の人ってどうやって情報調査しているの?
実際に使っている情報調査ツールが知りたい。
こんな疑問にお答えします。
本記事の信頼性
製薬会社の研究員にとって、情報調査は大事な業務の一つです。
世の中には色んな情報調査ツールがありますが、全てに目を通すのは難しいですよね。
今回は私が普段情報調査に使っているツールを紹介します。
私の専門はがん領域なので、記事の最後にはがん研究に使える便利な統合データベースも紹介します。
私の同僚にこのデータベースを紹介したときに、非常に便利だと驚いていました。
なので、今回紹介するデータベースは知っていると結構お得なツールだと思います。
ぜひ普段の業務や調査活動に役立ててください。
本記事の内容
- 創薬研究におすすめの情報調査ツール
- がん研究におすすめの統合データベース
目次(クリックすると読みたい部分まで飛べます)
創薬研究者におすすめの情報調査ツール
普段、論文やニュース、添付文書情報などを調べるときに使っているのは次の4つです。
すべて無料で使えます。
情報調査ツール
- Google Scholar
- 日系メディカル
- PMDA公式サイト
- Clinical Trials
順にご紹介します。
Google Scholar
Google Scholarは言わずと知れた論文検索ツールです。
おなじく論文検索で有名なツールとして、Pubmedがありますよね。
ただ、Pubmedは最新論文の場合、検索してもひっかからないことがあります。
というのも、PubmedがWeb上をクロールして情報を拾ってくるのには、論文が投稿された日から1日ぐらいラグがあることがあります。
なので、Google Scholarの方が最新の情報を検索するには適しています。
また、Google Scholarにはアラート機能があります。
アラート機能は特定のキーワードに対してヒットする最新論文をメールで届けてくれるサービスです。
たとえば、『p53』や『KRAS』など、自分の興味のある遺伝子名やタンパク質名を登録しておきます。
すると、毎日このキーワードに関する最新論文をメールに届けてくれるわけです。
私はキーワードを10個程度登録して、自分のスマホに届くようにしています。
通勤時間に内容をチェックし、興味のある論文については会社のパソコンでじっくり読む感じです。
毎日自分でキーワード検索するのも良いですが、結構疲れますよね。
Google Scholarを使えば、受動的に情報をゲットできる仕組みを作れるのでおすすめです。
日経メディカル
日系メディカルは医療関係のニュースを日本語でチェックできるサイトです。
日系メディカルは業務の空き時間にチェックしています。
また、学会カレンダーなどで、面白そうな学会を探すのにも役立てています。
日経メディカルはASCOやAACRといった大きな学会のレポートも掲載してくれます。
なので、業界のトレンドを把握するのにとてもおすすめのサイトです。
何気に使えるのが、『処方薬事典』というタブです。
ここには、糖尿病治療薬や抗がん剤、免疫抑制剤など、ありとあらゆる治療薬の作用機序や副作用が概説されています。
非常に使える機能です。
PMDAの公式サイト
PMDAは医薬品の承認審査に関わる独立行政法人です。
このサイトは日本で承認されている医薬品の添付文書やインタビューフォームを調べることができます。
インタビューフォームには、非臨床でのデータが載っていたりします。
たとえば、in vivoの抗腫瘍試験やin vitroの細胞死評価など。
これらの情報は、自分の研究を進めていく際に実験系を作る上で非常に役に立ちます。
たとえば、自分の研究対象とする疾患で使われている薬剤の情報について、調べるときは添付文書やインタビューフォームを見るのが良いです。
PMDAのサイトを使えば、簡単にそれらの情報を入手することができます。
Clinical Trials
Clinical Trialsは臨床試験の情報を調べることができます。
たとえば、肺がんに関する臨床試験を網羅的に調べることもできますし、『nivolumab』などの特定の薬剤に関する臨床試験を網羅的に調べることができます。
また、Phase を絞った検索もできます。
たとえば、『KRAS』というキーワードが含まれるPhase I 試験の情報を調べるといったことも可能です。
新たにテーマを立ち上げるときなど、競合となる薬剤の情報を調べるときに活用しています。
がん研究におすすめの統合データベース
私が研究業務をする中で、かなり使っている統合データベースは次の2つです。
おすすめのデータベース
- canSAR black
- cBioPortal
canSAR blackはあまり知られていませんが、個人的にめっちゃおすすめです。
たとえば、『BRAF』などと入力して検索すると、阻害剤をはじめとしたリガンド情報や立体構造の情報、細胞内での局在の情報などが一気にわかります。
しかもめっちゃ見やすいし、操作が簡単です。
適当にいじってれば使い方わかります。
この6等分されたパイチャートをクリックするだけで、別の情報が見られます。
また、BRAFなどのタンパク質情報だけでなく、『HCT-116』などの細胞株情報を入力して検索することもできます。
細胞株の情報を入力すると、細胞株の変異情報などが一気にわかります。
canSAR blackはPDBやClinical Trial、UniProtなど様々なデータベースを統合するデータベースです。
なので、いろんな情報を網羅的に調べることができます。
同様の統合データベースとして私がよく使っているのはcBioPortalです。
cBioPortalはTCGAをはじめとした臨床データを統合し、視覚的に見やすくしてくれているサイトです。
臨床サンプルにおける、変異や発現の情報を入手することができます。
たとえば先程の『BRAF』で検索すると、こんな感じで簡単に情報がゲットできます。
これらの情報は新たなテーマを立案するときに非常に役に立ちます。
見た目もキレイなので、そのままプレゼン資料に使えます。
また生データをCSVファイルで落とせるので、解析にも使えます。
ぜひ臨床情報をうまく活用して、自分の研究テーマの魅力度を高めてください。
まとめ
今回は私が業務でよく使っている情報検索ツールやデータベースをご紹介しました。
特にデータベースに関しては、自分の研究に明日から活かせる部分が大きいと思うのでぜひ活用してみてください。
これ以外にも色々と便利なツールはあるので、適宜記事にしていきたいと思います。
私が思うに、情報調査に重要なのは次の2点だと思います。
ポイント
- 短時間
- 網羅的
情報調査は時間をかければいいってもんでもありません。
というより、漠然と調べるのではなく、仮説をもった上で短期集中型で調べるのが最も効率が良いです。
なので、短時間でかつ網羅的に調べられるようなツールは特に重要だと思っています。
今回紹介したcanSAR blackやcBioPortalは色んなデータベースを統合したデータベースです。
なので、いちいち色んなデータベースに自分でアクセスしなくても、短時間で網羅的に調査することができます。
世の中には色んなデータベースがありますが、こういった統合型のデータベースを見つけた際は重宝すると良いです。
また、日経メディカルなどの日本語でわかりやすく解説してあるサイトで日々知識をアップデートしておくと、英語サイトでの情報収集の効率も上がります。
ぜひ普段の研究生活に取り入れてみてください。
今回は以上です。