製薬会社の研究テーマってどうやって決まるの?研究テーマの見つけ方が知りたい。
こんな疑問にお答えします。
本記事の信頼性
私は製薬会社で研究をしています。
私はこれまでに自分でテーマを生み出し、研究してきました。
本記事では、研究テーマを生み出すために必要なスキルをお伝えします。
ぜひ最後まで読んでみてください。
本記事の内容
- 研究テーマの見つけ方は主に3つ
- 研究テーマを生み出すための考え方
- 研究テーマを生み出すための行動習慣
- 製薬会社で画期的な創薬研究をしよう
目次(クリックすると読みたい部分まで飛べます)
研究テーマの見つけ方は主に3つ
代表的な研究テーマの見つけ方は主に3つです。
研究テーマの見つけ方
- 論文や学会などの外部情報
- 共同研究
- セレンディピティ
1つずつ見ていきましょう。
論文や学会などの外部情報
もっとも代表的なのは、論文や学会情報をもとに、新たな研究テーマを生み出すパターンです。
日々、世界中から様々な論文が報告されます。
それらの中には、未来の新薬の種があります。
論文情報から研究テーマを生み出すためには、研究者の目利き力が必要です。
実はあまり知られていないことですが、論文のデータは再現しないことも結構あります。
これは、論文が捏造されているわけではありません。
研究機関ごとに設備や実験条件が異なるので、うまくデータが再現しないことがあるのです。
論文の情報は世界中の製薬会社がアクセスできます。
したがって、論文情報をもとにした研究テーマは、競合優位性を出しづらい可能性もあります。
共同研究
企業と大学の共同研究から研究テーマが生み出されるパターンもあります。
企業はモノづくりに強く、大学は基礎研究に強いです。
その特長を活かし、お互いに組んで創薬研究を進めるパターンです。
大学側から共同研究案件として企業側に話が来ることもあれば、逆もあります。
まだ論文になっていない情報をもとに研究ができる場合もあるので、競合優位性のある研究テーマが生まれやすいです。
セレンディピティ
何かを見つけようとしているときに、偶然別の発見をすることをセレンディピティといいます。
たとえば、現在の研究テーマを進めている中で、偶然別の現象を見つけるみたいなイメージです。
セレンディピティに基づいた研究テーマはオリジナリティがとても高いです。
したがって、非常に競合優位性があります。
セレンディピティは狙って生み出せるものではありません。
ただ、セレンディピティは何か行動を起こさないと絶対に得られませんよね。
行動力のある研究者はセレンディピティを呼び込むことができる可能性が高いです。
研究テーマを生み出すための考え方
研究テーマを見つけるためには、次の2つを考え方が重要です。
ポイント
- 判断軸を決める
- 結論を出せる
順に見ていきましょう。
判断軸を決める
論文や学会で情報を得たりすると、どれも魅力的に見えます。
また、セレンディピティを呼び込み、何か新しい発見をしたときってどうしても無条件に魅力的に見えます。
自分の発見を何としても研究テーマに繋げたいという気持ちが生まれます。
このような心のバイアスは、自分の判断力を鈍らせます。
自分の偏った感情に流されず、魅力的な研究テーマを生み出すためには、テーマ提案のための判断軸を設定するのが重要です。
たとえば、『Aに対する薬剤を創る』という研究テーマを考えてみましょう。
私の場合以下の判断軸で研究テーマを創出しています。
判断軸
- 薬効
- 安全性
- アンメットメディカルニーズ(UMN)
薬効と安全性はわかりやすいですよね。
そのターゲットを狙ったら、どれだけ効きそうかが薬効です。
安全性はそのターゲットを狙った時の毒性の程度です。
アンメットメディカルニーズ(UMN)は、未充足の医療ニーズです。
つまり、Aに対する薬剤を創ったとき、救われる患者さんはどれいるか。
要は、患者さんのためになるかどうかです。
判断基準は人それぞれです。
ただ、判断基準をしっかり持っていれば、客観的な判断ができます。
また、複数の研究テーマ候補があったときにも優先順位がつけられます。
結論を出せる
研究には、時間・お金・人数の制約があります。
ダラダラと研究テーマを進めるわけにはいきませんし、予算にも限りがあります。
ひとつの研究テーマに充てられる人的リソースにも限りがあります。
なので、しっかりと結論を出せる研究テーマかどうかは重要です。
いくら面白そうな研究テーマでも、結論を出せないと意味がないわけです。
たとえるなら、『がん予防薬』みたいなテーマはとても難しいです。
もし、がん予防薬を世に送り出そうとすると、まずは臨床試験をする必要があります。
がんが発症するには、高齢者の方が多いので、一般的には50歳前後〜60歳以降です。
つまり、30年以上、実際にはがんを予防するかどうかわからない治験薬を飲み続けてもらう必要があります。
がん予防薬なので、がん患者さんではなく健常人に治験薬を飲んでもらうことになるでしょう。
がんを予防するかもわからない治験薬を30年間飲み続けてくださいってなかなか難しいですよね。
しかも、30年後にがんを予防しないどころか、思わぬ毒性が出ることもありえます。
こういう研究はいくら面白そうな研究でも結論を出せない可能性が高いですよね。
過去にアスピリンが大腸がんの予防効果を検証する臨床試験をしたことがあります。
これは結果的には失敗でしたが、ポリープの発生量を指標とすることで、臨床試験を組むことができました。
この臨床試験のように、ポリープの発生のような、がんの発生以外の測定項目(代替エンドポイントと言います)を設定できれば、まだ臨床試験ができる可能性はあります。
予防をテーマにするときは、その治験薬を飲む治験参加者の気持ちも考えて研究テーマの価値を見極めなければいけませんね。
研究テーマを生み出すための行動習慣
私が研究テーマを生み出すために実践している行動習慣があります。
行動習慣
- 常にネタを探す
- 自分でコントロールできる時間をもつ
常にネタを探す
365日、ネタを探しています。
でも、むやみに論文を読むわけではありません。
『こういう薬があったら患者さんのためになるな』
『こういうコンセプトの薬ってどうだろうか』
みたいな想像を膨らませることです。
常にネタを探す意識をもっているだけで、日常の風景が変わります。
自分でコントロールできる時間をもつ
新しい研究テーマを生み出すためには、時間が必要です。
日々、目先の仕事に追われている限り、絶対に新しい研究テーマは生み出せません。
まずは一日の業務時間の中で、最低1時間、未来の仕事を生み出すための時間を作ります。
一週間のスケジュールを立てるときに、まず新しい研究テーマを生み出すために必要な時間を毎日1時間ずつ、無理やり確保しています。
たしかに、業務が忙しいと、なかなか未来のことが考えられなくなります。
でも、毎日継続して未来への投資ができれば、必ず報われるときが来ます。
また、未来への投資を習慣化すると、継続的に魅力的な研究テーマを生み出せます。
製薬会社で画期的な創薬研究をしよう
製薬会社の研究職は、非常にレベルが高く、めちゃめちゃ楽しいです。
ぶっちゃけ、毎日遊んでいるような感覚です。
製薬会社では自分でどんどん研究テーマを生み出すことができます。
ぜひあなたの力で、画期的な創薬研究テーマを生み出してみてください。
製薬会社の就職に興味があれば、ぜひ以下の記事を参考にしてみてください。
今回は以上です。